芽吹いたばかりの里山で“春の集い”
ぞおっき山オオムラサキの森にて


旧大間々町の市街を抜け、渡良瀬川を渡るとそこは塩原地区。塩沢地区は更に里山を北へ分け入ったところに位 置する。
その、里山の奥まった一画に、「ぞおっき山オオムラサキの森」がある。その広さは約二ヘクタール。段々畑の一番奥の畑が広場として開放され、去る四月十六日(日)、「群馬国蝶オオムラサキの会」(会長=阿部勝次さん)主催による今年最初のイヴェント、“春の集い”が開かれた。

まだ、タラッペは芽吹いたばかり

広場には山を流れる沢からの水が竹の樋で引かれ、さわやかな水音を立てていた。里山の雑木は、今、まさに芽吹いたばかり。 「春の集いも今年で13回目です。まずは張り切ってラジオ体操から」
阿部会長の挨拶で、まず身体のストレッチ。なぜなら、昼迄、里山に分け入り、自然観察やオオムラ君の幼虫調査、そして、それが最大の目的である山菜取りに出かけるからだ。
落ち葉の降り積もった山道を歩く。天狗のウチワのような大きな落ち葉はホウの木の葉だ。
行きは登り坂。所々にあるタラノキの芽、すなわちタラッペは、ああ残念、まだ芽吹いたばかりで小さい。それに立ち枯れているタラノキが少なからずあった。
「タラッペは全部とると木が枯れちゃんさね」
モノ知りの参加者の一人がつぶやいた。
「あっ、これオイシイんだよね」
会長の蝶吉さんの手は早い。新芽の柔らかそうなところをササッと摘んでいく。
サンショの新芽、これもまだ出ていない。
行きはかくのごとし。
しかし、帰路の途中から、幾つかの収穫にめぐまれた。
ヤブレガサ、ヤブレガサもどき、ワラビ、ゼンマイ……。
ぶ厚い落ち葉に何度か足をとられたりしたものの、無事帰還。広場では居残り組の人たちの手によりイモ煮が煮え、カレーやオニギリが準備されていた。
とってきた山菜を天ぷらにし、沢の水で冷やしたビールやジュースで乾杯する。
山菜狩りのあとの至福のひとときだ。

歌、そして賑やかな近況報告

古くからの会員の一人、中里さんのアコーディオン伴奏により、全員で歌を唄う。これがいい。里山の雑木林を背景に、南へ開けた広場に憩いつつ、大人も子どももいっしょになって声を合わせる。
たき火の煙と共に、里山の木々の中へ流れていく人々の歌声。
近況報告ではタガメの先生こと堀越さんが、羽化に成功したばかりのヒラタクワガタを持ってきてくれた。
「羽化したばかりって、まだ赤っぽいね」
と、会員の一人。
「これから色が濃くなっていくんさ」
と、別の会員がポツリ。
考えてみれば同会の会員さんたちは昆虫少年や少女であり、大人たちはそのなれの果 てなのだ、ということにあらためて思いが及んだ。
従って、虫や蝶に関してなら、ほぼマニア、今風に言うなら蝶オタク、といった人たちが多い。
堀越さんの持参したヒラタクワガタは一点のクモリもなく、春の陽に、まるで宝石のように輝いていた。

■群馬国蝶オオムラサキの会 事務局:〒371-0045 前橋市緑が丘町19-1 
阿部勝次方TEL.027-233-3554